一角獣の目

忘れないための日記帳

生クリームをトッピング

 今日は全国的に寒かったらしい。私の住むあたりも雪こそ降らないが強い北風が吹いていてとても寒かった。そんな中私が何をしていたかというと、散歩をしていた。

 朝、母が「用事があるので少し外出するが、ついてくるか」と聞いてきたので、特に用もなかった私は車に乗り込んだ。少しの間揺られ、目的地に着くと、母はまるで風の音なんて聞こえてないみたいな気軽さで「気分転換に散歩してきなよ」と言った。そのあたりは私もあまり出歩いたことのない街だったし、ただ待っているのは苦手だし、と思い、私は素直に車を降りた。ブーツを履いてきたことを少し後悔した。山から吹き降りる風に髪を弄ばれ、最近伸びてきたのが嬉しかったはずのそれがうざったくて、今だけ坊主になりたいなどと思ったりした。

 とくに目指すべき場所もなく、ぶらついている途中で見つけたカフェも閉まっており、ただ、ただひたすら風の中を歩いていた。私は昔から歩くのが好きで、高校時代などは何の用もないのに一駅(田舎の一駅なので、5km間隔がザラである)歩いたりしていた。何も考えずに足を動かすのが良い気晴らしだったのかもしれない。今日も何を楽しむでもなく、学校帰りの中学生とか、自転車でひた走るおばあちゃんとか、スーパーマーケットの外にいた盲目の猫とか、そういう生きものとすれ違いながら、用事が終わった母から電話がかかってきたころには、三キロほど歩いた後だった。ブーツを履いていたけれど、不思議と足は痛くならなかった。しかし寒さにやられたのか、頭がきんきんと痛かった。

 母と合流した後「寒いので何かあたたかいものを飲もう」という話になって、私が高校生のころによく通っていたコーヒーショップへ寄った。注文してから少し時間を置いて出てきたカフェラテは、甘くてあたたかくて、学校帰りに飲んだあの味と変わりなくて、なつかしさが胸にあふれた。隣で「おいしいねえ」と母が呟いたのが、私のよい思い出を母と共有できたように感じられて、とても嬉しかった。寒かったけれど、寒ければ寒いほど、あたたかい飲み物はおいしくなるような気がして、それもいいなと思ったのだった。